浮雲
2017年05月10日
『サーカス五人組』『妻よ薔薇のやうに』『乙女ごころ三人姉妹』を神保町シアターで、『浮雲』をトーホーシネマズ日本橋3で観て、成瀬に惨敗ふじき★★,★★,★★,★★
成瀬4本まとめてレビュー
おで、成瀬とは合わないみたいだよ。
◆『サーカス五人組』『乙女ごころ三人姉妹』『妻よ薔薇のやうに』『浮雲』
五つ星評価で【★★どれもどれもだなあ】
日本映画の名監督として名を馳せてる成瀬巳喜男だが実は1本も見た事がなかった。
という事で「にわかシネフィル」っぽく、何本か通って見てみた。成瀬巳喜男という人は悪い人ではないのだろう。そういうのはヒシヒシと感じる。でも、私とは何となく生きてるスピードが違う(威張ってる訳ではない)。『マカロニほうれん荘』のキンドーさんがなんだ馬の介のテンポと絶妙に合わないように、私と成瀬も絶妙にテンポが合わない。あんまり背伸びはするもんじゃないね。順番を付けるなら、サーカス、乙女ごころ、妻よ、浮雲の順かな。
『サーカス五人組』はチンドン屋や運動会の生演奏を生活の糧とする5人の楽師が町に入って、サーカスの労働争議に巻き込まれて舞台に立ったりしながら町を出て行くまでの話。昭和10年頃のドサ回りのサーカスがどんな事やってたのかが分かって風俗的に面白い。ドラマものんびりいろんな局面があって退屈しない。映画内のサーカスで見れるのは、花形の空中ブランコ、ナイフ投げを応用した美女を的にした拳銃芸、ダンスレビュー、自転車曲芸、など。動物見世物はないようだった。映画で代わりに見る事が出来るのだからリーズナブルと言っていいでしょう。
『乙女ごころ三人姉妹』門付け芸人の母を持つ三姉妹の悩み。門付け芸人とはほぼ「流し」と考えていい。お金を貰って歌舞音曲を奏でる人。江戸時代からあったが、貧乏人がやる賎業であり、ゆすりまがいの強要や、売春などとリンクする部分もあったので、さげずまれて当たり前な感じがこの頃でもまだ残っている風である。長女は駆け落ちして家を出てしまい、三女は末っ子故に甘えて暮らしている。割りを食うのが次女で、やりたくない門付けの仕事を有無を言わさずやらされている。
そして次女は長女、三女の幸せの為に自らの幸せを捨てていく。内容キツい。何か、必殺シリーズの前半の貧乏人が巨悪でひどい目に合う部分だけで終わってしまうような、そんな話だった。
この映画が成瀬のトーキー第一作で、おっかなビックリ音を入れているようである。セリフのあるシーンとないシーンの差が顕著。もともとサイレントでも伴奏は入ってたから、伴奏だけあって延々セリフがないシーンはサイレントっぽく感じる。喋るシーンは比較的ずっと喋って間を繋いでるんじゃないだろうか。
『妻よ薔薇のやうに』ダメ夫が妻と愛人の間で板挟みになる軽コメディー。明るい修羅場みたいな独特のトーンが面白いが、ちょっと体調不良でウンウン唸りながら見たので(実際には無言です)楽しめなかった。きっと再見したら楽しめる気がするのだけど、ちょっとその余裕がない。
『浮雲』高峰秀子デコちゃんは好きなのだけど、妻と分かれられない森雅之と不貞の関係を止められない状態は見ていて辛い。高峰秀子も幸薄いが、森雅之も病的にあちこちで女と寝てしまう。いかんよなあ。こういう社会性より愛が優先されてしまう映画は苦手。
うさんくさい商売として、この頃(1955年)から宗教ビジネスが出てくるのが先見の明があるよなあ。
【銭】
神保町シアターは三作品とも「映画監督成瀬巳喜男初期傑作選」プログラムで各1200円。
『浮雲』は午前十時の映画祭価格で1100円。
▼作品詳細などはこちらでいいかな
・サーカス五人組@ぴあ映画生活
・乙女ごころ三人姉妹@ぴあ映画生活
・妻よ薔薇のやうに@ぴあ映画生活
・浮雲〈1955年〉@ぴあ映画生活
おで、成瀬とは合わないみたいだよ。
◆『サーカス五人組』『乙女ごころ三人姉妹』『妻よ薔薇のやうに』『浮雲』
五つ星評価で【★★どれもどれもだなあ】
日本映画の名監督として名を馳せてる成瀬巳喜男だが実は1本も見た事がなかった。
という事で「にわかシネフィル」っぽく、何本か通って見てみた。成瀬巳喜男という人は悪い人ではないのだろう。そういうのはヒシヒシと感じる。でも、私とは何となく生きてるスピードが違う(威張ってる訳ではない)。『マカロニほうれん荘』のキンドーさんがなんだ馬の介のテンポと絶妙に合わないように、私と成瀬も絶妙にテンポが合わない。あんまり背伸びはするもんじゃないね。順番を付けるなら、サーカス、乙女ごころ、妻よ、浮雲の順かな。
『サーカス五人組』はチンドン屋や運動会の生演奏を生活の糧とする5人の楽師が町に入って、サーカスの労働争議に巻き込まれて舞台に立ったりしながら町を出て行くまでの話。昭和10年頃のドサ回りのサーカスがどんな事やってたのかが分かって風俗的に面白い。ドラマものんびりいろんな局面があって退屈しない。映画内のサーカスで見れるのは、花形の空中ブランコ、ナイフ投げを応用した美女を的にした拳銃芸、ダンスレビュー、自転車曲芸、など。動物見世物はないようだった。映画で代わりに見る事が出来るのだからリーズナブルと言っていいでしょう。
『乙女ごころ三人姉妹』門付け芸人の母を持つ三姉妹の悩み。門付け芸人とはほぼ「流し」と考えていい。お金を貰って歌舞音曲を奏でる人。江戸時代からあったが、貧乏人がやる賎業であり、ゆすりまがいの強要や、売春などとリンクする部分もあったので、さげずまれて当たり前な感じがこの頃でもまだ残っている風である。長女は駆け落ちして家を出てしまい、三女は末っ子故に甘えて暮らしている。割りを食うのが次女で、やりたくない門付けの仕事を有無を言わさずやらされている。
そして次女は長女、三女の幸せの為に自らの幸せを捨てていく。内容キツい。何か、必殺シリーズの前半の貧乏人が巨悪でひどい目に合う部分だけで終わってしまうような、そんな話だった。
この映画が成瀬のトーキー第一作で、おっかなビックリ音を入れているようである。セリフのあるシーンとないシーンの差が顕著。もともとサイレントでも伴奏は入ってたから、伴奏だけあって延々セリフがないシーンはサイレントっぽく感じる。喋るシーンは比較的ずっと喋って間を繋いでるんじゃないだろうか。
『妻よ薔薇のやうに』ダメ夫が妻と愛人の間で板挟みになる軽コメディー。明るい修羅場みたいな独特のトーンが面白いが、ちょっと体調不良でウンウン唸りながら見たので(実際には無言です)楽しめなかった。きっと再見したら楽しめる気がするのだけど、ちょっとその余裕がない。
『浮雲』高峰秀子デコちゃんは好きなのだけど、妻と分かれられない森雅之と不貞の関係を止められない状態は見ていて辛い。高峰秀子も幸薄いが、森雅之も病的にあちこちで女と寝てしまう。いかんよなあ。こういう社会性より愛が優先されてしまう映画は苦手。
うさんくさい商売として、この頃(1955年)から宗教ビジネスが出てくるのが先見の明があるよなあ。
【銭】
神保町シアターは三作品とも「映画監督成瀬巳喜男初期傑作選」プログラムで各1200円。
『浮雲』は午前十時の映画祭価格で1100円。
▼作品詳細などはこちらでいいかな
・サーカス五人組@ぴあ映画生活
・乙女ごころ三人姉妹@ぴあ映画生活
・妻よ薔薇のやうに@ぴあ映画生活
・浮雲〈1955年〉@ぴあ映画生活