住んではいけない部屋

2016年02月13日

『残穢 住んではいけない部屋』を丸の内ピカデリー1で観て、心霊実話テイストの到達点だふじき★★★★(ネタバレ的)

五つ星評価で【★★★★この年になって心霊実話テイストで長編映画を見れるなんて思いもしなかった。内部に『呪怨』を取りこもうとしている攻撃的な内容が凄い】

原作未読。

稲垣吾郎の「ほん怖」の前身、ジャパンホームビデオが出していたオリジナルビデオシリーズで「ほんとにあった怖い話」という作品群があり、「心霊実話テイスト」と呼ばれたその作品群は日本映画界が作ったホラーの中で、今でも最も怖い映像群であると断言できる。何が怖いって、物語が解決しないのである。見終わった後の地続き感が果てしなく怖い。例えば、『リング』を観て貞子が怖くても、『呪怨』を観て俊雄が怖くても、キャラ化されたそいつらは、現実世界にまで侵食してきたりはしない。『ほんとにあった怖い話』の無名の幽霊たちは映画を観終わって、その無名の霊と同じ類の霊がすぐ後ろから現われてもおかしくない、そういうリアルな恐怖感を持ったものだったのだ。

今回の『残穢』の構造はこの心霊実話テイストをベースに据えている。怪奇現象は人間に解決などできない。人間はその怪奇現象から遠ざかるか距離感を測ってやり過ごすしかないのだ。そして、もう一つ執拗に作り込まれているのは
・幽霊がいました。
・幽霊と人間は交渉できない。
・人間の生活が壊れだす。
という単純パターンでは長編映画にならないので、大きな原悪のような「呪い」があり、それが時代を越えて少しずつ呪いを累積させていく流れを見せるダイナミズム。これは『呪怨』の屋敷が担っていた役柄に近い。『呪怨』は屋敷がそれを身に付けたのは最初の惨劇ただ一つとしたが、『残穢』は積み重なる連鎖がどんどんそれを強固にしていった事を説得力を持って見せた。

いいね、いいね。ゾクゾクする。
この話を語るために背景に徹する「私」竹内結子の無気力にも見える大人感もいいし、
一緒に謎を解明する相棒になる「久保さん」橋本愛の普通感もいい(※)。
※ 109シネマズ特報の橋本愛のお仕着せ衣装は忘れてあげたい。

この核の二人が凄く安定していて、
周囲、佐々木倉之助、坂口健太郎、山下容莉枝の情報収集能力で
どんどん怖い話が論理的に広がっていくところが今までになく面白い。
そして、最終的に「逃げ場がない」事を肯定して終わるのも堂々としている。

キャストの話で言うと、日本にはまだまだ怖い顔の人たちがいっぱいいるなあと思わされた。頭のおかしくなってしまうお婆さんとか物凄く怖い顔でしょ。呪いで引越ししてしまう燐家の住人や、橋本愛の部屋の元の住人、強行に及ぶ母親、暗闇に顔だけ浮かぶ座敷牢の男。みんな一人一人実にちゃんとした演技で怖い。

私、幽霊・亡霊・地縛霊の類を実際に信じる人なのだが、その幽霊のパーソナリティー(人格)は信じない。幽霊とは過去にあった人格の記録や一念が何かの拍子に現世に残った物だと思っている。だから、彼等との意思疎通は出来ない。映画の中で、首吊り夫人のビジュアルのイメージが何人何か所かで拡散していき、それを「穢れに触れた」からと言っているが、同じ建物内で同じビジュアルが映るのはよいとしよう。以前、その建物に暮らしていた人が追体験で他所で同じ霊体験を追体験してしまうのもその事象を内部に取り込んでしまったのなら、なくもないだろう。ただ、追体験した人が自殺した場所で、後の住人が元のイメージの霊を見るのは無理があると思う。その一点だけが相容れない。


【銭】
松竹系の前回入場割引使用により1300円。

▼作品詳細などはこちらでいいかな
残穢〈ざんえ〉−住んではいけない部屋−@ぴあ映画生活
▼この記事から次の記事に初期TBとコメントを付けさせて貰ってます。お世話様です。
残穢〈ざんえ〉−住んではいけない部屋−@映画通信シネマッシモ☆映画ライター渡まち子の映画評
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