『私、違っているかしら』を神保町シアターで観て、意外と芋いかな?ふじき★★★★『スプリット』をユナイテッドシネマ豊洲9で、『皆はこう呼んだ、鋼鉄ジーグ』をHTC有楽町1で観て、どっちも変な英雄譚やねふじき★★★,★★★

2017年06月02日

『アイ・インザ・スカイ』『ヒトラーの忘れもの』『湯を沸かすほどの熱い愛』をギンレイホールで観て、痺れる痺れる変に痺れるふじき★★★★,★★★★,★★★★

◆『アイ・インザ・スカイ』
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▲何でも器用によう演じるわ。

五つ星評価で【★★★★ヘレン・ミレンの存在感が光る。ヒリヒリくる佳作】
ヘレン・ミレンの指揮官が効いている。
本来、この役は男の役者に振られるような役だし、
男の役者に振られたら感情的に好戦的に演じられそうな役だ。
ヘレン・ミレンは全く冷静に一個の部品のように演じた。
よい軍人は作戦遂行を目的とし、そこまでの最短距離をただ突き進む実務家だ。
彼女が被害予定の少女を見て思う事は、作戦遂行に支障を来たすかどうかでしかない。
基本、軍人(指揮官)は常に味方と敵の生き死にを計算して、
味方の被害の軽微である事、敵の被害の甚大である事を即座に求められる。
味方でも敵でもない被害者は作戦遂行においては無でしかない。

テロリストを討伐する為に、罪のない少女の命を晒していいか?
これは足し算引き算の問題ならYESだし、
彼女自身に取って彼女は他の誰にも代えられないという哲学に準拠するならNOだ。
答はない。
誰が誰を殺したという事実だけが残る。
その事実に対して言い訳ができるかどうかが現代の戦争だ。
言い訳ができなければマスメディアを介して敵につけこまれるし、
言い訳が出来ればマスメディアを介して敵の攻撃を無駄に出来る。
いまや敵の攻撃の成功は実際の殺傷人数の大小ではなく、
メディアを通して相手組織の国内・国外での支持率を下げる事なのだ。

戦争において命は取引材料でしかない。
そして予告でも流れているように、味方にリスクのない爆撃に対して
内部からも「恥じ入る作戦ね」という意見が出される。そんな事はなかろう。
要はこれは、やはりイメージ操作の問題なのだ。
被害に会うのが、年若い少女ではなく、アル中の老人だったらこうも問題にはならない。
テロリストは次は少女で弾幕を張るべきだ。

PS 若いテロリスト二人(テロ遂行犯)の生死が不明に思えるのだがどうだろう?
PS2 あの、どう見ても育ちの悪い工作員(バーカッド・アブディ)は
 『キャプテン・フィリップス』に出てたのか。
PS3 アイ・インザ・スカイ……大空の愛ちゃんかあ。


◆『ヒトラーの忘れもの』
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▲針みたいな鉄の棒を砂浜に刺して地雷を探す(超アナログ)

五つ星評価で【★★★★ナチスが埋めた地雷を掘り出されるために徴用されたドイツ少年兵。こちらもヒリヒリ来る実話】
より立場の弱いものに重圧は皺寄せされる。
それにしても扱いがひどい。
取り出した地雷を再利用する訳でもないのなら、
ローラーみたいな重しをつけて爆破させてしまうほうが安全だと思う。
ローラーや、重しになる物が持たないか。


◆『湯を沸かすほどの熱い愛』
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▲一見幸せそうだが、みんなそれぞれ決意を持っている。

五つ星評価で【★★★★宮沢りえと杉崎花】
余命二か月を宣告される宮沢りえはもちろん良いが、
それを受ける杉崎花杉咲花がやはり凄く良い。あの子、声がいいわあ。
鬼畜ではないので、杉崎花杉咲花の下着姿で興奮はしないのだが、
アレをやったらイジメはビビって止まるかエスカレートするか
二者択一の博打であろうから、今回はたまたま上手く行ったという事だろう。

母ちゃん(宮沢りえ)と長女(杉崎花杉咲花)と次女(伊藤蒼)&オダギリジョー
の関係性に驚いた。いや、よく練ってあるわ。
ラストは賛否両論だが、個人的にはどうでもいい。
サゲの為に落ちが必要なだけで、あそこはそんなに大事ではないと思う。


【銭】
ギンレイホール、会員証で入場。
『アイ・インザ・スカイ』&『ヒトラーの忘れもの』で一番組。
『湯を沸かすほどの熱い愛』は『永い言い訳』とカップリングだったけど、見直すには早すぎたのでスルーした。

▼作品詳細などはこちらでいいかな
アイ・イン・ザ・スカイ 世界一安全な戦場@ぴあ映画生活
ヒトラーの忘れもの@ぴあ映画生活
湯を沸かすほどの熱い愛@ぴあ映画生活
▼この記事から次の記事に初期TBとコメントを付けさせて貰ってます。お世話様です。
アイ・イン・ザ・スカイ 世界一安全な戦場@ここなつ映画レビュー
ヒトラーの忘れもの@ここなつ映画レビュー

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この記事へのコメント

1. Posted by クマネズミ   2017年06月02日 05:29
お早うございます。
『湯を沸かすほどの熱い愛』のラストに関し、「あそこはそんなに大事ではないと思う」とあり、まさにその通りながら、“大事”なアソコを見せるのが犯罪行為となるのと同じように、本作で描き出されるあの行為は犯罪のために、つい議論してみたくなるのではないでしょうか?
なお、誠につまらない点で恐縮ですが、「杉崎花」は、『スキャナー 記憶のカケラをよむ男』とか『アリのままでいたい』についての貴エントリと同じ記載法にされた方が。
2. Posted by ここなつ   2017年06月02日 12:32
こんにちは。
「アイ・イン・ザ・スカイ」の方に。
ヘレン・ミレンはいわゆる「男前」女優さんなので、ぴったりな配役だったと思います。正に軍人の鑑だと言えますね。
たとえいたいけな少女であっても、作戦遂行のための障害物のひとつでしかない…。
じゃ、アレがすっげーイケメンだったら?!…いやいやきっと何ら動じない感じがヘレン・ミレンにはあったので。そこが良かった。です。
3. Posted by ここなつ   2017年06月02日 12:37
こんにちは。「ヒトラーの忘れもの」の方へ。
今も戦争の爪跡として世界各地で地雷撤去の問題が取り沙汰されていますが、戦勝国が敗戦国のそれも少年兵に撤去作業をさせた、というのは本当に衝撃でした。この作品を観るまでちっとも知らなかったです。
結局、「それは人道にもとる」という意識があったから、表立った話にはならなかったのでしょうね。しかも勝った方だからね。「勝つ」ってすごいな。
4. Posted by ふじき78   2017年06月03日 00:36
こんちは、クマネズミさん。
柴咲コウと同じタイプの名前なんすね。
ありがとうございます。直します。
5. Posted by ふじき78   2017年06月03日 00:43
こんちは、ここなつさん。
ヘレン・ミレン男前でしたね。
「非女子図鑑」という映画で片桐はいりが誰よりも「男」である女を演じているのですが、ヘレン・ミレンもその役ぜんぜん大丈夫そうです。

地雷の話は、、、、70年も眠ってたのかよってのが凄い話だなあ。

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