『テラフォーマーズ』をニッショーホールで観て、おでは好きだよふじき★★★★『オーソン・ウェルズのフォルスタッフ』を新文芸坐で観て、モラリストを気取るよふじき★★★

2016年05月01日

『じゃりン子チエ』を神保町シアターで観て、高畑勲を雑感ふじき★★★

特集「桂文珍セレクション 大阪と映画」から1プログラム。

五つ星評価で【★★★つまらなくはないけど朴訥な映画ですなあ】
高畑勲という人は偉大なる失敗者みたいに語られる。
何だか不思議な監督である。
直近の『かぐや姫の物語』が作品的にもつまらなくなく、
興行的にも大ヒットしてるのに製作費がかかりすぎて大赤字とか、
その前の『となりの山田くん』もヒットしなかったけど、膨大な金を食ったとか、
その辺りの評判が監督の株を下げているのだろう。
どれもつまらなくはないのだけど、胸を張って面白いと言える作品が少ない。
いや、面白いんだけど、映画見た時のカタルシスみたいなんが薄いんである。

なので、『じゃりン子チエ』もちょっと微妙だった。
いや、つまらなくはないし、完成度は高い。いい味出してる。
はるき悦巳のマンガがそのまま動いていて何の違和感もないのは驚くべき事である。
それぞれのエピソードもマンガのまま、微笑ましい。
でも、映画としてこれでいいのかという感じはある。
何かダメ家族再興の物語として劇的なエピソードを展開しながらも
そんなん知るかとばかりにとことん平坦なのである。
極度に高ぶらない。劇的に盛り上がったり絶望したりしない。
つまり、どのシーンもとても均質で日常的なトーンで語られる。
これはハレの日を描いて見世物にする映画よりは
常に寄りそって日常を共にするTVの属性に近い。
だから、火を灯すようにポッと温まるのだが、
何か一本映画観たぞおって満足感が薄い。
えらそうな事言ってるが緊張感続かんで途中、船を漕いでしまった。

しかし、一つの事件・事故を起こすために、演出で観客の感情を手玉に取るというのは観客に気持ちよく「嘘」を強要させる事なので、そういう洗脳っぽい手法を好まないとかなのかもしれない(考えすぎか)。

この映画の中で唯一、感情的に盛り上げようとしている演出が見られるのはアントニオの遺児アントニオJrが仇の小鉄と対峙する際のマカロニな感じのファンファーレだ。あれはかっこいい。でも、所詮は猫の喧嘩。話が小さい。まさか、どちらかというと脇の話である猫の喧嘩を一番の山場みたいに撮るとは思わんかった。それ以外にも描く物がもっとあるだろ。

『クレヨンしんちゃん』同様、これも週刊アクション連載の原作だ。
大人びた子供が好きなのかな、アクション。
チエの方が手に職(ホルモン屋経営)付いてる分、超大人だけど。
ちえとしんちゃん、対峙させたら常識的なチエは案外しんちゃんにいいようにあしらわれるかもしれん。

鉄を初めとする大阪のおっさんはほぼ芸人で占められていて、鉄ののりおとかやはりアフレコは下手だ。でも、何かこれはこれで成立している。一人が下手だと目立つけど、みんながそこそこ下手だと空気になるのかもしれん。


【銭】
神保町シアター正規入場料金1200円。

▼作品詳細などはこちらでいいかな
じゃりン子チエ 劇場版@ぴあ映画生活

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この記事へのコメント

1. Posted by 豆はんてん   2016年05月01日 19:29
お疲れ様です!私も封切りで観た時、これで終わるのかと拍子抜けした記憶があります。チエの歌の件を最後にした方がよかったと思うのですが、いかがでしょうか?
ところで廣木隆一の「やりんこチエ・いちぢく診察台」は、ご覧になってますか?私はずっと観たいんですが、まだです。
2. Posted by ふじき78   2016年05月01日 21:27
こんちは、豆はんてんさん。
「親バカかもしれないけど、この子本当に偉いと思うんですわあ」というセリフにはぐっと来ました。ただ、あんまりシンミリ終わらせると「ジャリん子チエ」っぽくないから避けたんじゃないですかねえ。

多分、やりんこチエは見てます。全くもうカケラも覚えてません。ただ、やっぱ子供キャラを化粧っぽい大人が演じるのはキッツイなあと当時思ったのを覚えてます(「子供に演じさせんかい」という訳ではないんですが)。

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