新・平家物語

2017年01月19日

『噂の女』と『新・平家物語』を角川シネマ新宿1で観て、健二健二してるふじき★★★★,★★★

「溝口&増村保造映画祭 変貌する女たち」から
溝口健二は多分『雨月物語』しか観ていない
(あっ『元禄忠臣蔵』があった)。
それしか観なかった理由は特になく、
ただ手元になく、特に食指も働かなかった。それだけだ。
なので、今回の映画祭も特に手を出そうと言う気はなかったのだが、
雑誌の懸賞で招待券が当たったので、これ幸いとイソイソ出向いていった。
うん、いやあ、やはり知名度のある監督は凄い。
満足して劇場を後にした。

◆『噂の女』
五つ星評価で【★★★★軽い中に凄みがある】
『雨月物語』の時にも舌を巻いたのだが、セットが迫ってくる。
そして、カメラが王のように正しい位置に鎮座し、
その答しかありえない安定した絵を作る。
もちろん役者の演技も常に正しい。
まるで、その家に行き、その家の出来事をずっと横で見ているよう。
溝口健二の映画の印象はまず、この絵(撮影)の安定にあると思う。

そこで繰り広げられる話は、未見者の印象としては「女虐め」。
だから、あんまり陰惨っぽくない感じに見えた『噂の女』を選んだ。
それは成功のような、失敗のような。
軽いコメディ・テイストの話の中でも、
やっぱり女は男社会に蹂躙される被害者みたいな位置づけで描かれていた。
圧倒的に男が悪辣なのだが、
それを手助けするように女も恋に盲目になってしまう。
実に「世間って絶対そんな感じしかないのだ」という溝口健二の信念が漂ってくる。
そして、おそらく、世間はそんな感じだったのだろう。
今でもそんなに変わらな・・・・・くはなく、弱い男が増えたかな(俺よ俺)。

田中絹代はとても強い遊郭のおかみさん。
早くに旦那を亡くしているが恋愛経験は少なく、職業に反して恋に一途。
その娘の久我美子は現代的な洋装で芸者座敷を闊歩する。
失恋したり、いい娘だったり、親と三角関係になりかけたり、目を離せない。
よきかな、よきかな。
「コメディー」と言われれば「コメディー」なのだけど、
おかしな世相を背景に人間がちゃんと描けているので、
普通に「とてもいい映画を見た」感が残る。
女は虐げられてはいるけど、反面、自由でもあるので、
観る前に心配した女虐めでキツイ感じはしなかった。


◆『新・平家物語』
五つ星評価で【★★★カラーになっても実寸大のセットに狂気を感じる】
溝口最晩年期のカラー映画(カラー2本しか撮ってない)。
侍の平清盛が自分の出自や差別と戦いながら天下への第一歩を踏み出すまで。
マツケンの大河ドラマ『平清盛』
あれと本筋は同じで、差別に苦しめられる武士階級・平家が
歴史の流れに乗り勃興していく。
映画は大河にもあった比叡山の輿に弓を射るシーンがクライマックス。
清盛はやはりのし上がるまでが良いのであって、その後はオマケだから、
映画の前半生中心という組み立ては非常に正しい(でもどうやら続きの映画があるらしい)。

驚くのはやはりセットがどう見ても本当の平安時代みたいにリアルな事。
いや、そら、知らないけどさあ。『雨月物語』同様リアルとしか思えない。

で、女性映画の大家とされている溝口健二だけど、
この映画では女性は市川雷蔵の引立て役。全然、顔とか映らない。
主役の若かりし清盛を演じる雷蔵だが、妙に眉毛が太い。
義憤にかられる熱い男を演じるため、野暮ったく眉を太くしてるのかもしれない。
この市川雷蔵がどこか草剛を思い起こさせると言ったら怒られるだろうか。
退屈ではないんだけど、映画としてのうねりみたいなのが今一薄い。


【銭】
雑誌の懸賞で当たった額面1000円の前売券2枚を使用。
▼作品詳細などはこちらでいいかな
噂の女@ぴあ映画生活
新・平家物語@ぴあ映画生活

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