マンガをはみ出した男赤塚不二夫

2016年07月29日

『いしぶみ』『さとにきたらええやん』『マンガをはみ出した男赤塚不二夫』をポレポレ東中野で観て、ふーんおっおっうむうふじき★★,★★★,★★★

ポレポレで観たドキュメンタリー三本をできるだけ短評で。

◆『いしぶみ』
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▲綾瀬はるかの衣装は白と黒。黒の方が胸がボデっと見えます。

五つ星評価で【★★綾瀬はるかをずっと見てられる幸せというのが麻痺する映画】
繰り返し繰り返し聞かされる「なくなりました」という言葉。
野外奉仕に集められた広島三中一年生321人は
原爆爆心地から500メートルの位置で被爆する。
これはその被爆した少年の最後を周りの者が書き留めて記録化した事実の朗読だ。
砂ですら燃える原爆の熱の中、即死を免れた彼等の一旦時間を置いてからの死を朗読は延々と話し続ける。淡々と誰も助からない結果を話し続ける。
朗読者は綾瀬はるか。
色のついていない彼女が朗読するからこそ、失われたのは「命」であり、それがかくも残酷な方法で奪われたというのが伝わってくる。軽コメディー『高台家の人々』同様、これは綾瀬はるかという資質を前提にして作られた映画(正確にはTV番組の編集版映画)である。綾瀬はるかは優しいし強いし弱い。朗読を強いられる彼女は観客の代表者だ。

構成としては単純に面白くない。
絵的な演出は加えられているが、淡々と語られるだけと言うのは事実が驚愕するような内容でも、やはり退屈を誘ってしまう。ひどい出来事は「ひどい事を想像させる」だけでなく、「非人道的なひどいビジュアル」を叩きつけてもよかったのではないか。
もともとテレビ番組なので画素が多少荒いのはしょうがないが、カメラの影やカメラその物が移ってしまうのはあまりいい気持ちがしない。

池上彰パート(偶然、生き残った者へのインタビュー)は池上彰がインタビューしているという宣伝的な強みはあるが、池上彰だからこそという視点は感じない。いや、それはTVを見た上での池上無双に期待しすぎなんだろう。これはこれでよし。

早朝10:20,12:20と上映回があり、一回目、船を漕いでしまった。
二回目の回も入れ替え無しでいいというのでもう一回見た。
二回目の方が入場者が多く、車椅子のお客と視覚障害のお客が来ていた。
盲導犬と一緒に映画を見るのは初めてだけど、実に静かに待機をしていた。
『いしぶみ』は朗読が主体なので、耳だけで聞いていても分かると思うが、
本編前の予告って、聴覚だけだと謎の映画が多い。
今の映画の予告って映画のタイトルをほぼ話さないのだなあ。


◆『さとにきたらええやん』
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▲パワフルやね。

五つ星評価で【★★★「こどもの里」の魅力】
大阪、釜ヶ崎(貧乏人いっぱいおるところやろ)にある保育施設「こどもの里」を描いたドキュメンタリー。大阪のガキどもがつらい目を背景に抱えながらも「こどもの里」という居場所を得て、元気に暮らしてるのがよく分かる。うじゃうじゃ出てくる子供を見てるだけで元気が出てくる。本来、子供ってそういう力を持っている。ただ、あまり近くにずっといられるとうるさくてオデは嫌なのだけど。
ドキュメンタリーとしては、幾つもの事件をダラっと平行して淡々に描いてるのだけど、特に工夫や演出を感じさせないこの映画が予想以上に退屈を誘わない。きっと小さな一つ一つの出来事の積み重ねで少しずつ事態が前向きに進んでいくのが分かるから安心して見れるのだろう。


◆『マンガをはみ出した男赤塚不二夫』
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▲これ、アラーキーによる写真。

五つ星評価で【★★★赤塚不二夫を題材にしたドキュメンタリー】
晩年アル中になって、マンガから遠ざかったりする部分は
豊臣秀吉の晩年みたいで、やっぱりちょっとキツいんだわあ。
しかし、破竹の勢いのデタラメっぷりは良い。
気分でふらふらデタラメしてる訳ではなく、
それが社会的にタブーであっても、タブーであれば尚更のこと、
システマティックにデタラメする事が、赤塚不二夫の存在意義だったのだ。
赤塚っぽい絵でありながら、ちょっと外してるようなアニメート部分は微妙。
赤塚論としてはたいへんよく出来た映画だと思う。


【銭】
マンガをはみ出した男赤塚不二夫:額面1500円の前売券をチケ屋で980円でGET。
さとにきたらええやん:映画ファン感謝デーに観て1000円。
いしぶみ:1年有効の5回回数券購入(6000円)1回使用。
 ちなみに1年有効の10回回数券10000円というのもある。

▼作品詳細などはこちらでいいかな
いしぶみ@ぴあ映画生活
さとにきたらええやん@ぴあ映画生活
マンガをはみだした男〜赤塚不二夫@ぴあ映画生活

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