『黄金のアデーレ』『ミケランジェロ・プロジェクト』

2016年05月08日

『黄金のアデーレ』『ミケランジェロ・プロジェクト』をギンレイホールで観て、似た題材なのに響いたり響かなかったりふじき★★★★,★★

◆『黄金のアデーレ』
五つ星評価で【★★★★ヘレン・ミレンを筆頭とする3人のマリアが素晴らしい】
ヘレン・ミレン演じる老境のマリアの人と柄が分かるような演技が素晴らしい。又、彼女の幼年時代、青春時代を演じた他の二人のマリアも素晴らしい。幼年時代は若くてちっちゃくってロリで可愛いのだけど、それだけでなくちゃんと演技をしている。青春時代はドングリ眼で『トト姉ちゃん』の高畑充希に似てる。人生に翻弄される姿はドングリ眼がよく似あう。ちなみに旦那役は『ごちそうさん』の通天閣、東出昌大に似てる。旧ウィーン時代の夢のような豪勢さ。その失われた時間全てが閉じ込められているような「アデーレ」の肖像の美しさ。その対比となる官僚主義の無味乾燥さ。この官僚主義が旧ナチスに傾倒していったオーストリア政府と地続きのように描かれるのが実に上手い。どちらも自分の地位を揺るがさないために、人を人として認めない所業を行っている意味で、ヘレン・ミレンに取っては二重の簒奪に他ならない。彼女が最初、故郷への再訪を断る。その断りの気持ちそのままに彼女は二重に心ない行動を取られてしまうのである。
彼女を助ける若手弁護士にライアン・レイノルズ。この人、個性がないのが個性の人。『グリーン・ランタン』とかヒーロー役なのに、断固として普通の人だったような気がする。無味無色が芸という事もあるのだな(褒めてる)。

物語は裁判の経緯や、その時々のマリアや若手弁護士の心の動きなどを上手く見せつつ、圧倒的に過去のオーストリアのシーンが素晴らしい。奪われたものの大きさ、美しさ、気高さに圧倒される。そして、その魂が返還されて戻ってくるラストシーンは綺麗事かもしれないが、とても高揚した。

ウィーン側の人のクソ役人っぷれも良かった。
やはり、物語が面白くなるには悪い奴も存在感がないと。
今回は山賊のような悪ではなく、
官僚主義その物みたいなビジュアルの人で良かった。

PS 『黄金のおでん霊』なんてどんな映画だよと思ってたよ(うそ)。
PS2 ジェダイ的な解釈だと『黄金のアデーレ 名画の復讐』である。
PS3 ヘレン・ミレンはREDだし、
 ライアン・レイノルズはデッドプールだから、
 実力行使で取り戻しに行った方が話が早い気がする。

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▲よく見ると絵の中にチビ太のおでんの三角丸四角のようようなおでん霊が……


◆『ミケランジェロ・プロジェクト』
五つ星評価で【★★公開まで色々曰くのあった映画だけど、成程大した事ない】
確か公開時期が延期になり、一時は未公開になるかもと言われた一本。
まあ、しかし、面白いエピソードを色々持っているのに何故か映画にすると盛り上がらない。演出するクルーニーはこれで監督作品5本目なのに、今までのどの映画より、この映画には緊迫感が注ぎ込まれていない。戦場の緊迫感溢れる中で、人質ではなく美術品を奪還するプロジェクトという、他人から呆れた目線で見られかねない行動を取る主人公たちのスピードや熱情が嘘でも見えてこない。どちらかと言うと外部の呆れた目線が強く描かれていて、そこで終わっている。反論せいよモニュメンツ・メン。戦中雑学アレコレみたいに軽い話にする演出方法もあったと思う。しかし、話は淀むように遅く、笑いが起きるような状況はあっても、笑いに変わるような空気の軽さは微塵もない。かと言って感動にひれ伏する重厚さもない。ただ歩みが遅く重いのだ。
パリに向かうマッド・デイモンが凄腕の学芸員に見えず、ケイト・ブランシェットと無駄に逢瀬を重ねてるだけにしか見えない。他のメンツも名乗りはあってもそれぞれプロらしく見えない。軍人として素人のようには見えるが、それはそのままだからだろう。チーム全員それぞれ場所の移動にも危険か伴う筈なのに、平和な敗戦地を素人が平和に移動しているようにしか見えない。すぐ集まってしまうので、それぞれの移動の距離感もない。
最終的にナチによってどれだけの物が簒奪され、そのうちどれだけを奪い返し、どれだけが破壊され、どれだけがソ連に持って行かれたかなどの答え合わせもない。
ただ、頑張って頑張った結果上手く行ったことと上手く行かなかった事を羅列してるだけである。

原題の『The Monuments Men』『ミケランジェロ・プロジェクト』に変えたのは成功。これはいい仕事だと思う。

まあでもね、ダメっしょ、映画としては。

PS 『三池崇史のランジェリー・プロジェクト』という
映画だったら釘付けかもしれない。
PS2 美術品の前でプロがプカプカタバコ喫っちゃいかんだろ。
PS3 クルーニーとSS将校が対面するラストの見せ場で
 SS将校がクルーニーがユダヤ人じゃない事を確認した後、
 軽く「それはおめでとう」みたいな事を言う。それはおそらく、
 「俺たちドイツ人が世界中から嫌われているユダヤ人を
  いっぱい駆除してやったので、ユダヤ人以外にとっては
  より住みやすい世界になった筈だ」という意味を含んでいるようだった。
 映画全編の中で、このSS将校のセリフと
 無造作に財物として放置されている銀歯が一番、印象に残った。

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▲「今度は美術品でカモろうぜ!」と言ってるようにしか見えない。


【銭】
ギンレイホール、会員証で入場。

▼作品詳細などはこちらでいいかな
黄金のアデーレ 名画の帰還@ぴあ映画生活
ミケランジェロ・プロジェクト@ぴあ映画生活
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