『キングコング対ゴジラ』を神保町シアターで観て、いつも通りふじき★★ @tomoyaharada『GODZILLA ゴジラ』を神保町シアターで観てやっぱピンとは来ないんだよなふじき★★(ネタバレあり)

2016年06月14日

『ヒメアノ〜ル』を東宝シネマズ日本橋1で観て、吉田恵輔らしい順当な仕上がりだけど過度には褒めないぞふじき★★★

img0
▲公式HPからひったくってきた「私の好きな人岡田さんです」の佐津川愛美ちゃん。ジャニーズ・ガードが固くて画像少ないんだよね。

五つ星評価で【★★★吉田恵輔らしくキッチリ商品に仕上げてきてるけど、吉田恵輔ならもっと行けるんじゃないのかと思うと手放しに絶賛は出来ない】
原作未読。
中心は濱田岳、佐津川愛美、ムロツヨシの三人組と対峙する森田剛の四人のドラマなのだが、駒木根隆介、山田真歩も含めて六人1セットで見ると女子が強いと言うか、女子の君臨が明確になる。
この『ヒメアノール』の世界での「あがり」は何かというと、男の子と女の子がラブラブで楽しい結婚生活(SEX付き)を送れるという事だろう。この点に関して、女子二人は目標に対して非常にアクティブだ。そこそこ相手を変えて交尾しているらしい佐津川愛美、相手を信じて相手の障害を乗り越えさせようとする山田真歩、この二人はある意味正常でとても普通。
問題があるのは男子四人で、過去に同一の事件に関わった三人はみな停滞している。
森田剛は目的とする未来が見えない。彼は事件の後、ずっと今を凌ぎ続けているに過ぎない。救いのない彼は救いを得んとして佐津川愛美をストーキングしたのかもしれないが、基本、この物語の世界に聖女はいないのだ(ただこの辺の描き込みは少なくて詳細はよう分からん)。
駒木根隆介は森田剛が障害になって自立が出来ない。彼には彼を守ろうとする連れ合いがいるのだが、その連れ合いは森田剛と駒木根隆介の抱えた秘密の時間を軽視するあまり二人同時に排除されてしまう。
濱田岳は一見お人好しのように見えて、虫も殺さないように見えながら実際に虫も殺せないだろうが、彼が実は一番心ない人間ではないだろうか。彼は人からの命令を自分の意志で拒否できない。事件の前も後も。それは彼の生来のお人好しの面もあれば、気の弱さがそのまま残っているという事もあるだろう。だが、彼が常人ならやはり普通、森田剛に声はかけられないと思う。どこか心が麻痺しているから声をかけられるのだろう。森田剛が彼と自分を指して「俺たちのような屑は人生もう終わってるんだよ」と言ったのはおそらく当たっている。森田剛もクズだが、濱田岳も劣らずかなりのクズだ。そこはお人好しに見える濱田岳だからと言って「あの人いい人なのに」とか思って見てはいけない。「濱田岳=お人好し」という呪縛はそれだけ強いから見ているうちは全然悪い奴とは思えず、やっぱ濱田岳も凄いしキャスティングも偉いなあと思う。
そして、ムロツヨシはこの野郎連中で唯一、強く未来を見たがっているのに、人間としての実力の低さで夢を見る事が出来ない(笑)。おもろい。森田剛、濱田岳、駒木根隆介の三人は未来を見れない起源の事件があるのにムロツヨシにはそれがない。ただただ生え抜きのエリート的な自生のダメ人間なのだ。人間として色々問題を抱えている他の三人より明らかに魅力がないし、長生きしているだけでスキルの高い生活を望めそうな空気がない。あの奇声とか子供の反抗期みたいな髪型とか最高だ。その希望のない彼が何よりも普通に人間らしい部分を持ってたりする点がこの映画の希望になってるところがおかしくて魅力的だ。うん、ムロツヨシはいつも通り見ていてイヤないつものムロツヨシなのに、他のどの映画のムロツヨシより良かった(直近では『変態仮面』のムロツヨシは悪い意味で最低)。

森田剛は普通にいい演技。森田剛の顔と今回の役柄がジャストフィットした結果。途方もなく上手いとは思わないが、いい空気を持っている(根拠のない上から目線)。腹を刺す時はズブズブだが、背中を指す時はちょっと硬そうな感じが良かった(本当かよ!)。

出演本数の多さと何でもかんでも引き受ける敷居の低さから(そう思える)変な映画にも出てしまうのだけど、佐津川愛美は相変わらず達者。貧者の核兵器であるBC兵器のようにもう本当、貧者の大女優で、映画をどっしり支えている。佐津川、森田、ムロ、濱田が炬燵の四本足のような安定さで映画を支えている。演出手腕もあるのだろうけど下手な俳優がいない。大竹まこととか映画で見るとチョイ役でも映画の空気と合わないイメージなのだが、今回は見事に溶け込んでいた。

ヒメアノールは食餌になるようなエサのトカゲらしいのだけど、森田剛に殺される全ての人間が「ヒメアノール」としてしまっては映画のタイトルとしてつまらないので、実は肉食女子の佐津川愛美に食べられながらも、森田剛にも二重に食べられる濱田岳がキング・オブ・ヒメアノールって解釈でいいかもしれない。「器が小さい」人間の方が「器が大きい」人間より断然エサっぽいし。


【銭】
トーホーシネマズの会員ポイント6ポイントを使って無料鑑賞。

▼作品詳細などはこちらでいいかな
ヒメアノ〜ル@ぴあ映画生活
▼この記事から次の記事に初期TBとコメントを付けさせて貰ってます。お世話様です。
ヒメアノ〜ル@映画通信シネマッシモ☆映画ライター渡まち子の映画評
ヒメアノ〜ル@yukarinの映画鑑賞ぷらす日記
ヒメアノ〜ル@ノルウェー暮らし・イン・原宿

トラックバックURL

この記事へのトラックバック

18. ヒメアノ〜ル  [ マープルのつぶやき ]   2017年03月01日 08:11
JUGEMテーマ:邦画     「ヒメアノ〜ル」 監督:吉田恵輔 2016年 日本映画 99分 R15+ キャスト:森田 剛      濱田 岳      佐津川愛美      ムロツヨシビル   清掃会社でバイトをして
17. ヒメアノ〜ル  [ 銀幕大帝α ]   2016年11月19日 15:14
2015年 日本 99分 サスペンス/コメディ R15+ 劇場公開(2016/05/28) 監督: 吉田恵輔 『純喫茶磯辺』 原作: 古谷実 脚本: 吉田恵輔 出演: 森田剛:森田正一 濱田岳:岡田進 佐津川愛美:阿部ユカ ムロツヨシ:安藤勇次 <ストーリー> ビル清掃会社のパ...
16. No.546 ヒメアノ〜ル  [ 気ままな映画生活 ]   2016年07月10日 00:27
「行け!稲中卓球部」「ヒミズ」の古谷実による同名コミック。平凡な毎日に焦りを感じながら、ビルの清掃のパートタイマーとして働いている岡田は、同僚の安藤から思いを寄せるカ ...
15. ヒメアノ〜ル  [ 映画的・絵画的・音楽的 ]   2016年06月28日 06:30
 『ヒメアノ〜ル』をヒューマントラストシネマ渋谷で見ました。 (1)吉田恵輔監督の作品ということで映画館に行ってきました。  本作(注1)の冒頭では、岡田(濱田岳)が用具を使ってビルの窓を拭いています。  すると、先輩の安藤(ムロツヨシ)が、「岡村君、ストップ
14. ヒメアノ〜ル  [ ★yukarinの映画鑑賞ぷらす日記★ ]   2016年06月24日 22:43
2016/05/28公開 日本 R15+ 99分監督:吉田恵輔出演:森田剛、濱田岳、佐津川愛美、ムロツヨシ めんどくさいから殺していい? STORY:普通の生活に焦燥感を抱くビル清掃会社のパートタイマー岡田(濱田岳)は、同僚からカフェの店員ユカ(佐津川愛美)との恋の橋渡し役を頼ま
13. ヒメアノ〜ル  [ 映画三昧、活字中毒 ]   2016年06月22日 03:12
■ ヒューマントラストシネマ渋谷にて鑑賞ヒメアノ〜ル 2015年/日本/99分 監督: 吉田恵輔 出演: 森田剛/濱田岳/佐津川愛美/ムロツヨシ 公式サイト 公開: 2016年05月28日 清掃会社でアルバイトをしている岡田進は、やりたいこともなく、恋人もなく、毎日何とな
12. ヒメアノ〜ル ★★★★  [ パピとママ映画のblog ]   2016年06月19日 11:48
過激な内容で話題になった古谷実の人気コミックを、V6の森田剛を主演に迎えて実写映画化。ビル清掃会社のパートタイマーの青年と同僚が織り成す至って普通の日々と、欲望のままに殺人を重ねるサイコキラーの心の闇を描く。監督は、『さんかく』『銀の匙 Silver Spoon』などの
11. ヒメアノ〜ル  [ 象のロケット ]   2016年06月19日 07:00
地方出身の25歳の青年・岡田は現在、ビル清掃会社のパートタイマーとして働いている。 ある日、カフェ店員のユカに恋をした職場の先輩・安藤から恋のキューピット役を頼まれた岡田は、ユカが働く店を訪れる。 岡田はそのカフェで元同級生・森田と偶然再会するが、森田は高
10. ヒメアノ〜ル  [ とりあえず、コメントです ]   2016年06月19日 00:40
古谷実著の同名コミックを吉田恵輔監督が森田剛主演で映画化したサスペンスです。 もの凄く大変な作品とは聞いていたのですけど、根性を入れて観てみようとチャレンジしました。 その根性も砕け散るようなハードなシーンに圧倒されてしまうような作品でした。
9. ヒメアノ〜ル・・・・・評価額1700円  [ ノラネコの呑んで観るシネマ ]   2016年06月18日 19:31
平凡な奴が、一番怖い。 日本映画史に類を見ない大怪作だ。 
ダメ人間たちの恋愛模様と、その裏で進行するおぞましい犯罪の物語はごく単純、でも簡単には語れない。 原作は古谷実の同名コミック。 「ヒメアノ〜ル」って何だろう?と思ったら、“小さなトカゲ”のこと
8. 「ヒメアノ〜ル」  [ 元・副会長のCinema Days ]   2016年06月18日 07:55
 ラブコメとサイコホラーの“二本立て”という、その構成が面白い。もっとも、後半のサイコホラーの部分はあまり上等な出来ではないが、ラブコメとの対比の妙によってあまり気にならなくなってくる。こういう作り方はまさにアイデア賞ものだ。  将来に不安を抱きつつもビ
7. 『ヒメアノ〜ル』  [ beatitude ]   2016年06月18日 02:48
「なにも起こらない日々」に焦りを感じながら、ビル清掃会社のパートタイマーとして働く岡田(濱田岳)。同僚の安藤(ムロツヨシ)に、想いを寄せるユカ(佐津川愛美)との恋のキューピット役を頼まれ、ユカが働くカフェに向かうと、そこで高校時代の同級生・森田正一(森田.
6. ヒメアノ〜ル  監督/吉田 恵輔  [ 西京極 紫の館 ]   2016年06月18日 00:56
【出演】  森田 剛  濱田 岳  佐津川 愛美  ムロツヨシ 【ストーリー】 普通の生活に焦燥感を抱くビル清掃会社のパートタイマー岡田は、同僚からカフェの店員ユカとの恋の橋渡し役を頼まれる。彼女が働くカフェへと足を運んだ岡田は、高校時代の同級生・森田と再会。ユ.
5. 『ヒメアノ〜ル』  [ こねたみっくす ]   2016年06月17日 23:52
とんでもない映画だ! あんなラストを見せられちゃ、それまでの感情を全て否定してしまいたくなるではないか!コミカルラブストーリーが残忍なシーンのスパイスとなって展開して ...
4. 『ヒメアノ〜ル』 一寸の虫にも五分の魂、それでは殺人鬼には?  [ 映画批評的妄想覚え書き/日々是口実 ]   2016年06月17日 23:47
 原作は『ヒミズ』などの古谷実。  監督は『さんかく』『銀の匙 Silver Spoon』などの吉田恵輔。  特に趣味なんかもなく退屈な日々を過ごしている岡田(濱田岳)は、ビル清掃会社のパートタイマー。底辺の生活で夢も希望もないのだが、同僚の安藤(ムロツヨシ
3. 「ヒメアノ〜ル」  [ ここなつ映画レビュー ]   2016年06月17日 12:59
ある種のジャパニーズホラー。いや、これがホラーでなくてなんなのだろう?サスペンスなどと軽々しい表現は使いたくない。でも、最初は普通の邦画という気持ちで鑑賞していた。濱田岳とムロツヨシの力量に負う所が大きいと思うが。いかにも邦画的な。一風変わった間合いを醸
2. ヒメアノール  [ 映画通信シネマッシモ☆映画ライター渡まち子の映画評 ]   2016年06月15日 09:59
ビル清掃会社で働く岡田は、何も起こらない普通の生活に焦燥感を抱いていた。同僚の安藤に、安藤が想いを寄せる女性・ユカとの恋のキューピッド役を頼まれた岡田は、彼女が働く ...
1. 「ヒメアノ〜ル」☆最後に大粒の涙一つ  [ ノルウェー暮らし・イン・原宿 ]   2016年06月15日 00:26
ざわざわしてみぞおちの辺りがぎゅーっとなって、不穏なドキドキが見終ってからも止まらない。 映画としての完成度がこの上もなく高い映画。 予告編の期待度をはるか超えて、そして最後に一粒の涙がポロリ。

この記事へのコメント

1. Posted by ノルウェーまだ〜む   2016年06月15日 00:42
ふじきさん☆
なかなか言い得てますねー
確かに気が弱くて人が良さそうに見えて、一番ずるいのが濱田岳の役ですよね。この役の印象にぴったり!
配役が何しろ見事でした。
2. Posted by ふじき78   2016年06月16日 00:01
こんちは、まだむさん。
そろそろ濱田岳くんの「童貞似あいすぎ」もどうにかしてあげたいと思うんですが。やっぱ中心にいる4人は本当、盤石その物な感じでしたね。
3. Posted by ここなつ   2016年06月17日 13:05
こんにちは。
上から目線ではありません。ありませんが、素晴らしい記事をありがとうございます。
ぶっちゃけ、ふじきさんのこの記事に惹かれて観に行ったようなものです。
そうなの、この濱田岳のキャラにだまされてはいけないのよ!!色んなサイテーのことをジャンルをまたがって(恋愛・友情)やってのけるているのがこの岡田クンのキャラ。
でも、そう見えない。見えないからこそ、安藤先輩や森田クンの哀しみがじわりじわりと強まってくる。
のだと思います。
4. Posted by ふじき78   2016年06月17日 22:56
こんちは、ここなつさん。
褒められると照れるだがや(根拠のない名古屋弁)。
あれを濱田岳くんがやってるからみんな安心してしまうんだけど、「森田くん、こんなとこで会うなんてギヨギョー」と魚クンが演じたらけっこう際どい役じゃないのかと思うのですよ。
5. Posted by りお   2016年06月22日 03:31
こんにちは。

>濱田岳は一見お人好しのように見えて、虫も殺さないように見えながら実際に虫も殺せないだろうが、彼が実は一番心ない人間ではないだろうか。

そう思います。でもあれが普通の人、よくいるタイプなんだと思う。
だから濱田岳をあてたんでしょうね。
キャスティングはお見事!でした。
6. Posted by ふじき78   2016年06月23日 07:46
こんちは、りおさん。
濱田岳、最近では釣りバカのハマちゃんだったりするので、、、、若い時の西田敏行がこの役やっても大丈夫とか。いや、西田敏行と比べると濱田岳って断然人畜無害そうだ。

なので、「人畜無害・芸能人」で検索してみたら「えなりかずき」(笑) あー。なかなか納得できる答でした。
7. Posted by クマネズミ   2016年06月28日 06:31
お早うございます。
本作は、森田剛の演技が圧倒的ですが、実はおっしゃるように、「女子の君臨が明確」であり、なかでも、「実は肉食女子の佐津川愛美」が「映画をどっしり支えている」ように思えました。佐津川愛美をストーキングする森田剛にしても、逆に彼女に捉えられているのですし。
8. Posted by ふじき78   2016年06月28日 23:28
こんちは、クマネズミさん。
佐津川愛美が森田剛に無意識にでも「媚び」を売っていたと考えると、話の善悪が多少なりともぶれる気がしてならない。
9. Posted by SGA屋伍一   2016年08月08日 21:17
ヒロインが惚れっぽかったり「経験人数10人(だったかな?)」とさらっと言ってるところから、濱田君も遠からず飽きられる気がします。そう思うと言い気味だったり悲しくなったり
10. Posted by ふじき78   2016年08月08日 22:24
こんちは、伍一どん。
濱田君捨てられるに1リラ。
11. Posted by ヒロ之   2016年11月19日 15:17
こんにちは。
「ヒミズ」の映画化も実に素晴らしかったですが、この「ヒメアノ〜ル」も古谷実ワールドを忠実に再現していて私の中では大絶賛です。
だって、飲み会に連れてきた友達の女がモロに古谷キャラですもん(笑)。
12. Posted by ふじき78   2016年11月20日 10:29
こんちは、ヒロ之さん。
私、古谷実は今、イブニングに連載途中の奴しか読んだ事がないです。マンガの登場人物再現度で凄かった役者は「20世紀少年」の木南晴夏だなあ。
13. Posted by maki   2017年04月29日 14:42
こんにちは。
私も原作は未読でした。
ヒロインの経験があの年で10人で初体験が14歳ってところからして、
おとなしい&清純そうに見えるだけかと思ったのですが、
殴られた後も、最後まで抵抗して「いやー」と逃げようとする気概があったのはなかなか骨のある女性だなと。
ほんとにある意味で肉食系女子だったのかもしれない。
岡田の役柄は一番卑怯だけど、一番等身大でしたね
14. Posted by ふじき78   2017年04月30日 11:40
こんちは、makiさん。
岡田(濱田岳)は役者から言っても一番どこにでもいそうだし、そういう行動も取ってしまいそうだし、という役ですね。みんな普通に自分とムロツヨシを一体化するのもイヤだろうし。うん、まあ、私はムロツヨシの方が実際は近いかもしれんな。あんな髪型にはしないけど。

コメントする

名前
 
  絵文字
 
 
『キングコング対ゴジラ』を神保町シアターで観て、いつも通りふじき★★ @tomoyaharada『GODZILLA ゴジラ』を神保町シアターで観てやっぱピンとは来ないんだよなふじき★★(ネタバレあり)