『犬どろぼう完全計画』をシネマート新宿2で観て、すんげ好きふじき★★★★『ヒックとドラゴン2』を上野恩賜公園噴水前広場野外上映で観て、風が気持ちよかったよふじき★★★★(ネタバレ寸止めくらい)

2015年08月09日

『野火(塚本版)』をユーロスペース2で観て、あっさり感想ふじき★★★

五つ星評価で【★★★これはこれで大した物に違いない】

結論から言うと、私は市川崑版の方が好きだ。
市川版は、物事の筋書きをはっきり書いていて物語として分かりやすい。
塚本晋也の今回の映画化は同じ話を描き、
同じストーリーを辿っているにもかかわらず、感覚的で私には分かりづらい。
「私には分かりづらい」と書いたのは、
こっちの方が向いてる人もいるに違いないからだ。
塚本版はイベントである。
戦場に放り込まれた各人が、映画の主役と同じ事を音と光で体験する。
主人公は極力、語らず、観客の黒子に徹する。
感じたり、考えたり、意見を述べたりするのは主人公ではない、観客なのだ。
だが、私は戦争を体験するように、主人公と一体化はしなかった。
それは市川版を見ていて、話の筋書きを意識出来てしまう分、
没頭感を持ちづらかったのかもしれない。

塚本版、市川版、どちらも戦争の地獄絵図を描いているのだが、
市川版の方が地獄がより陰惨に見えるから私は好きだ。

塚本版は主観的に捉えられた地獄。地獄は主人公が見聞きする体験談である。
市川版は客観的に捉えられた地獄。主人公が見聞した事も含めるが、
大局的に発生する殺戮を島単位で描く。

この映画の中の表現ではないが、
原爆爆発の瞬間、灼熱の中で燃えて焼け爛れる人物ただ一人に焦点を当てたのが塚本版。原爆とはどのような兵器で、被害の様相を何台ものカメラで多角的に収めたのが市川版。とちらがより病巣を深く描けるかと言うなら市川版だろう。「戦争で死ぬ」場合でも、個人単位に見れば「一人が殺される」事が一度にいっぱい起こるだけである。だから、塚本の描き方が間違えてるとは言えない。ただ、この描き方を選ぶと、どうしても「それはその人だけに起こった事」に見えてしまうという欠点も持ってしまう。この人はこんなひどい目に会ったが他の人はそうでないかもしれない。だから、他の人も同じか、それ以上ひどい目に会う事が示唆される市川版の方が私は怖い。

ただ、塚本オリジナルの効果的な映像、効果的な音楽は
「塚本」その物で脱帽せずにはいられない。
その効果を再確認する為に、とりあえずもう一回観たい。


【銭】
ユーロスペースの会員割引で1200円。

▼作品詳細などはこちらでいいかな
野火@ぴあ映画生活
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野火(市川版)@死屍累々映画日記
野火(塚本版2回目)@死屍累々映画日記

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この記事へのコメント

1. Posted by ノルウェーまだ〜む   2015年08月09日 23:30
ふじきさん☆
市川版はより原作に近い印象がありますね。
戦後70年というこのタイミングに、強く反戦を意識して、よりメッセージ性を爆発的に強めたのが塚本作品と思いました。
2. Posted by ふじき78   2015年08月10日 22:56
こんちは、まだむさん。
私自身はよりひどい地獄として、市川版に魅力を感じました。ナイフを突き立てるような塚本演出には感心するのですが、じわじわと溺死させられるような理詰めの市川演出の方がやはり好きです。若い時に見たせいかもしれないですが。
3. Posted by クマネズミ   2015年08月25日 06:52
お早うございます。
おっしゃるように、「市川版は客観的に捉えられた地獄。主人公が見聞した事も含めるが、大局的に発生する殺戮を島単位で描」いていて、「物語として分かりやすい」ことは確かなことだと思います。でも、客観的な知識として得られるものは市川版の方が多いにしても、戦争のリアルな怖さを味わうという点からすると、クマネズミには塚本版の方ではないかと思ったところです。特に、市川版が映し出す風景には馴染めませんでした。
4. Posted by ふじき78   2015年08月26日 01:37
こんちは、クマネズミさん。
もちろん私はリアルな戦争を知らないんですが、市川版の「野火」でもっとも書き出そうとしていた部分は大本営の不手際で食い物もなければ、病気も直せない、武器も届かない軍人たちがバタバタ交戦もせずに死んでいく部分だと思います。次の戦争もこんなん起こりそうだぞ、と。米兵の機銃掃射シーンとかはなくても成立する。その恐怖はついでだから。なので、リアルな機銃掃射は割とどうでもいい。あれで死んだ人の数は少ないだろうから。
5. Posted by とらねこ   2015年09月09日 13:49
ふじきさん、こんにちは
私も市川版が元々好きだったので、見るまで本当に不安でしたし
一度目に見た時の感覚として、ふじきさんがおっしゃる気持ちも実は分かります。

塚本映画って元々、頭の中の想像で世界も自分も変わってしまう、
“奇々怪々なるもの”を描くという作家性がありますね。
これまで塚本映画を見たことのない人には割と掴みづらいものがあったり、
単純に塚本映画が合わないという人も居ますね。
そればかりか、描かれている内容も実は相当に難解であると思います。
6. Posted by ふじき78   2015年09月10日 00:26
こんちは、とらねこさん。
ユーロスペースで9月いっぱいはやってる事が分かってるので、もう一回見たいなとは思ってるんですけどね。一度そんなに乗れなかった映画は気が重いですね。

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