『アオハライド』をトーホーシネマズ六本木アートスクリーンで観て、凄いぞ本田翼ふじき★★★★『さよなら歌舞伎町』をテアトル新宿で観て、あっちゃんそれはないだろうふじき★★★(前田敦子部分のみネタバレ)

2015年03月08日

『おみおくりの作法』をシネスイッチ銀座1で観て、この素晴らしいラストを認めるべきか?ふじき★★★(ネタバレあり)

五つ星評価で【★★★あのラストには泣かされる。だが、それでいいのか】  

頭からネタバレで飛ばします

生きている今、自分の身体が「物」という認識はない。
だから、仮に死んだらできるだけ厳かに扱ってもらいたいと思う。
だが、役所仕事上は、死体(body)はもう、物でしかないのだ。
そういう風に移行しようとしている。
その中、厳かに儀式を取り行ってきた前担当者が事故で死に至る。
彼は自分が取り行っていた葬式とは正反対に、実に事務的に処理される。
参列者もなく、土に埋められたひっそりとした彼の墓地に集まる人かげ。
彼が今まで弔って来た人が彼を迎えにきたのだ。
ハッピーエンドのように見える。そのように演出されている。
そして涙も止まらない。
だが、それでいいのか。
彼が思いがけず人間的な死出の旅立ちを得たのは、彼の経歴ゆえだ。
今後、身よりのない死体は物として扱われる。
そして、事務的に取り扱われる物には今までのように思いは籠らないだろう。
「葬儀した」という形式の記録が残るのみ。
つまり、これはジョン・メイという彼が、
彼が行っていた仕事の断絶と引き換えに、彼の死後の旅立ちの保証を得る映画だ。
彼の残してきた現世には彼の仕事の痕跡は何も残されない。
そして、彼の去った現世には、もうそのように弔われる幸せな死者はいなくなる。
それをハッピーエンドのように扱うのはおかしくはないだろうか?

主人公の名前ジョン・メイの「ジョン」は日本で言うところの「太郎」みたいなありふれた名前。「メイ」は5月。5月から連想させるのは労働者の祭典「メーデー」がある。葬儀の日は「ジョン・メイの日」⇒「太郎のメーデー」。労働者の祭典を表しながら、映画で描くのは真の労働者の死。皮肉な構図になっている。

【銭】
映画ファン感謝デーに観たので1100円。

▼作品詳細などはこちらでいいかな
おみおくりの作法@ぴあ映画生活
▼この記事から次の記事に初期TBとコメントを付けさせて貰ってます。お世話様です。
おみおくりの作法@Nice One!!
おみおくりの作法@お楽しみはココからだ

PS ジョン・メイという名前から思いだす名前にジョン・ドウがある。
 『セブン』の殺人鬼の名前である。
 なるほど、彼にも彼自身なりの『おみおくりの作法』があった。
 ………「やり太郎」か?


トラックバックURL

この記事へのトラックバック

14. おみおくりの作法  [ いやいやえん ]   2015年09月08日 14:22
【概略】 ひとりきりで亡くなった人を弔うロンドン市の民生係、ジョン・メイ。彼は人員整理で解雇の憂き目に遭い、最後の案件にこれまで以上の熱意で取り組む。 ドラマ 人と出会い、死と向き合い、人生は輝きだす。 孤独死した人を弔う民生係の主人公。まあそうか
13. おみおくりの作法/エディ・マーサン  [ カノンな日々 ]   2015年07月14日 20:55
『フル・モンティ』のプロデューサーのウベルト・パゾリーニがメガホンをとり孤独死した人の葬儀を執り行う孤独で真面目な地方公務員の姿を描いたヒューマンドラマ。劇場予告編の ...
12. おみおくりの作法  [ 映画1ヵ月フリーパスポートもらうぞ〜 ]   2015年07月05日 23:19
評価:★★★★☆【4,5点】(10) 主人公のような仕事、ワタシは結構好きかもしれない。
11. [映画『おみおくりの作法』を観た]  [ 『甘噛み^^ 天才バカ板!』 byミッドナイト・蘭 ]   2015年06月29日 12:35
☆・・・良作でした。  主人公は、役所の閑職、民生課の一部所、身寄りのない死者の葬儀・埋葬をするたった一人の職員。  冴えなくも、生真面目に、一人一人の死者の調査をし、丁寧な弔いを行なっている。  調査で知った死者の弔辞を読み、その死者にあった音楽を選...
10. おみおくりの作法 ★★★★  [ パピとママ映画のblog ]   2015年03月25日 20:10
『ベラミ 愛を弄ぶ男』などのプロデューサー、ウベルト・パゾリーニが監督を務め、身寄りのない人の葬儀を行う地方公務員の姿にスポットを当てた人間ドラマ。『戦火の馬』などのイギリスの実力派俳優エディ・マーサンを主演に迎え、心を込めて死者を弔う孤独な男の生きざ...
9. 映画『おみおくりの作法』  [ ほし★とママのめたぼうな日々♪ ]   2015年03月18日 07:07
ファーストデイ、久しぶりにりんこちゃんと 「映画の日を楽しみましょう…」って事に。 上映時間のチェックから、チケットのゲ
8. 「おみおくりの作法」:地味で質素でまじめ  [ 大江戸時夫の東京温度 ]   2015年03月15日 22:56
映画『おみおくりの作法』の原題“Still Life”とは「静物画」のこと。まあ
7. 『おみおくりの作法』  [ beatitude ]   2015年03月15日 22:37
ロンドンの南部、ケニントン地区の公務員である44歳のジョン・メイ(エディ・マーサン)の仕事は、孤独死した人の葬儀を執り行うことである。几帳面な彼は死者の家族を見つける努力を怠らず、その人のために葬礼の音楽を選び、弔辞を書く。規則正しい仕事と生活をしながら...
6. 静かな人生〜『おみおくりの作法』  [ 真紅のthinkingdays ]   2015年03月15日 13:35
 STILL LIFE  ロンドン市・ケニントン地区の民生係、ジョン・メイ(エディ・マーサン)は、一人 暮らしのまま、誰にも看取られずに亡くなった人を引き受けるのが仕事。決して 事務的に処理することなく、身寄りや宗教を調べ、弔辞まで書いて
5. 映画・おみおくりの作法  [ 読書と映画とガーデニング ]   2015年03月13日 08:21
原題 STILL LIFE2013年 イギリス、イタリア ロンドン南部、ケニントン地区の民生係、ジョン・メイ(エディ・マーサン)44歳、独身孤独死した人の葬儀を執り行うのが彼の仕事です几帳面で真面目な彼は、亡くなった人の親類縁者を探す努力を怠りませんしかし、どう...
4. おみおくりの作法   STILL LIFE  [ 映画の話でコーヒーブレイク ]   2015年03月12日 21:40
非常に前評判のよい本作、シネスイッチ銀座まで行かないとダメかなぁと思っていたら 何と!横浜ジャック&ベティで既に公開しているではないですか!! 早速、水曜日レディースディに行ってきました。 いつもは10分前到着を目指して出かけるのですが、たまたま1時間前に到...
3. 「おみおくりの作法」  [ ヨーロッパ映画を観よう! ]   2015年03月12日 14:49
「Still Life」2013 UK/イタリア ジョン・メイは孤独死した人々の葬儀をアレンジするロンドンの民生委員。今日もたった一人で亡くなった人のもとへ駆けつける… ジョン・メイに「アリス・クリードの失踪/2009」「ロンドン・ブルバード -LAST BODYGUARD-/2010」「ワ
2. 『おみおくりの作法』 (2013) / イギリス・イタリア  [ Nice One!! @goo ]   2015年03月12日 09:45
原題: Still Life 監督: ウベルト・パゾリーニ 出演: エディ・マーサン 、ジョアンヌ・フロガット 、カレン・ドルーリー 、アンドリュー・バカン 、キアラン・マッキンタイア 、ニール・ディスーザ 、ポール・アンダーソン 、ティム・ポッター 鑑賞劇場: ...
1. 「おみおくりの作法」  [ お楽しみはココからだ〜 映画をもっと楽しむ方法 ]   2015年03月09日 00:38
2013年・イギリス・イタリア合作 配給:ビターズ・エンド 原題:Still Life 監督:ウベルト・パゾリーニ脚本:ウベルト・パゾリーニ製作:ウベルト・パゾリーニ、フェリックス・ボッセン、クリスト

この記事へのコメント

1. Posted by ryoko   2015年03月12日 21:40
こんばんは。
>これはジョン・メイが行っていた仕事の断絶と引き換えに、彼の死後の旅立ちの保証を得る映画
なるほど〜!です。
彼亡きいま、孤独死をした人は弔われることもなく、事務的に物として処理されるんですものね。
ジョン・メイは事故であまりにも呆気なく不慮の死を遂げたのでハッピーエンドとは思えませんでした。
そりゃないでーーーっと涙がこぼれました。

ジョンってキリスト教では十二使徒のヨハネですね。
ジョン・ドウ(John Doe)は身元不明の男性のこと(推理小説とかでは身元不明の死体)です。因みに女性の場合はJane Doeです。
2. Posted by ふじき78   2015年03月12日 21:49
こんちは、ryokoさん。
もう本当にあのラストは泣けるんですけど、あれ、泣いていいのって天邪鬼な自分が鎌首立ててしまいました。

あ、ドウはDoeなんですね。誰とも知らない者が七つの大逆の形で、生きてる者の死を装う。あれも、生きている人の為の弔いかもしれない。とことんコジツケですが。
3. Posted by rose_chocolat   2015年03月16日 08:14
遅くなりましたー

そうだねえ。ハッピーエンドとは私は思いませんでした。
ただ、もし誰にも褒められなかったとしても、その人の人生は報われたんじゃないか。そのことに対して光を当てたという意味で、この作品を私は評価しちゃいましたけどね。
ほぼ感覚的なというか主観のみですが。。
4. Posted by ふじき78   2015年03月17日 00:17
こんちは、rose_chocolatさん。
あのラストが遠景だけでカメラがジョン・メイに寄り添わないので、ジョン・メイの主観にポイントを置かないんだな、と思ったんです。そうすると、あの遠景を見守る視点は誰の視点なのかと言うと観客の視点に他ならない。
うん、「報われている人生」という事を否定したりはしません。比較になっちゃうけど、ジョン・メイの上司が「報われている人生」を送っているようにも見えないので。
5. Posted by maki   2015年09月08日 14:25
こんにちは

私も記事に書くのはためらってやめてしまったのですが、ラストシーンには?マークが浮かんでしまいました
ハッピーエンドではないし、感動…なのかこれ?と。
確かに一方的に行っていた葬儀への感謝と言うものはあるのかもしれないけれども、
主人公のある種の自己満足のようにもみえる行為は、尊厳と言う意味での他社の思いを本当に尊重しているのか、とか
てっきり、あの暗転の直前、感謝されかつ感謝するような展開になるのかと思えば、ジョン・メイ自身の姿がない、とか
色々疑問がわいてしまいました
そもそも、ああいう風に魂が現われるなら
肝心のジョン・メイはどこへいったのか。
6. Posted by ふじき78   2015年09月09日 00:37
こんちは、makiさん。
周りが感動の涙をツーと流している所を後ろ髪引っ張って疑問を呈するのは気が引けたんですが、思っちゃったんだからしょうがない。でも、人は努力して成し遂げた物事に対して、やはりそれに見合った評価を与えてあげたくなるのです。

> 肝心のジョン・メイはどこへいったのか。

キリスト教的な死生観で考えると、死者は最後の審判までずっと待ち続けるんじゃなかったでしたっけ?

コメントする

名前
 
  絵文字
 
 
『アオハライド』をトーホーシネマズ六本木アートスクリーンで観て、凄いぞ本田翼ふじき★★★★『さよなら歌舞伎町』をテアトル新宿で観て、あっちゃんそれはないだろうふじき★★★(前田敦子部分のみネタバレ)