『魔女の宅急便』をUCT3で観て、レビュー内に十八禁表現を含みますふじき★★★『映画ドラえもん 新・のび太の大魔境 ペコと5人の探検隊』をトーホーシネマズ渋谷1で観て、この映画レビューに下ネタをぶち込むのかふじき★★★

2014年04月10日

『ウォルト・ディズニーの約束』をUCT5で観て、物語を守ること壊すことふじき★★★(ネタバレ・・・かな)

五つ星評価で【★★★ディズニーとトラヴァースのどちらを支持するかで言えばトラヴァース】
『メリー・ポピンズ』原作は未読、映画は大昔見た筈だけど記憶が曖昧。

ディズニーのお約束と言えば、
ミッキーの耳が重なって一つにならないというのがあります。関係ないですね。

『メリー・ポピンズ』の作者トラヴァース女史とディズニーとの間の映画化を巡る血で血を争う熾烈な戦いの日々を描く。

どうも、けっこうみなさんディズニーに同情的なのであるが、
トラヴァース夫人に対しての方が私は同情する。
簡単に言うと、『アナと雪の女王』である。
原作を原案にしてしまう改変。あれは一番極端な例だと思うし、
ウォルト・ディズニー自身は関わっていないけど。
でも、ウォルト・ディズニーの精神は伝わってくるのではなかろうか?
ウォルト・ディズニーが原作付きの映画を作る時、
原作精神の再構築以上にディズニー作品への塗りつぶしを優先してる気がする。
一目見て、ディズニーと分かるパッケージング。
そして、原作の題名の知名度は上がるが、実物が手に取られなくなる。
ディズニーによってその物語が征服されるのだ。
それは抵抗して当然じゃないか。

という事で、エマ・トンプソンの涙の
「ペンギンの部分がひどすぎて」という照れ隠しセリフは、
大事な一線は守り通したという安堵とともに、
守り通せなかった些細な部分も山ほどある、という本音だろう。
ディズニーにもう少しデリカシーがあったら、
本当のペンギンを調教は出来ないにしても、
カトゥーン丸出しのアニメにはしなかっただろう。
資金面の問題か、技術面の問題か、それとも他に真意があるのかは分からないが、
もっと原作のテイストに合う映像化はやれば出来た筈だ。
ディズニーはそれをあえてしなかった。ディズニーテイストにして、
自社ブランドである事を誇示した、そうなんではないかと思っている。
だから、トラヴァース女史には同情する。
こんな話を又、商売にされちゃったりするし。
死ぬまで、いやいや死んでからもしゃぶられるのかヨ。

って意味でディズニーを「自己を押し付ける人」と考えると、
トム・ハンクスは適任。役に合わせるよりも、役を合わせる。
つまりトム・ハンクス本人がトム・ハンクスの個性をあまり減じないタイプだから。
とは言え、直前が『クラウド・アトラス』だったから、
何だかあの延長上に見えてしょうがなかった。
相手役がハル・ベリーだったらバリバリのスピンオフだと思っただろう。
ディズニーの父ちゃんの話がちょっと『ペコロスの母に会いに行く』を連想させた。
ええい、早く禿げてしまえ。

役者で言うと、運転手のポール・ジアモッティーが、
善人であるだろうけど、意外と内面が分からない感じでよかった。
彼の秘密が「自分が連続殺人鬼であること」とかじゃなくてよかった。


もう一人。
ミッキーマウスについて。
トラヴァース夫人が最初に着いたホテルで、
ディズニーからのありがた迷惑な歓迎のギフトを片づけて
最後に一体だけ片づけ損ねた縫いぐるみのミッキーに
「洗練さを学びなさい」と諭した場面は実によかった。

さて、洗練さとは何だろう。
スマートであること? 動きなどの所作が美しい事?
ネット辞書で引くと「優雅で品位の高いものにみがきあげること」。なるほど。
ディズニーの「ええがな、ええがな、みんな友達さけ仲良くやったらええがな」接待の正反対ということだ。多分、ディズニー社の一から十までが洗練ではない。
ミッキーもそういう世界でずっと暮らしてきたから洗練さを学ぶのは大変だったろう。
最終的にトラヴァース夫人は試写会場のチャイニーズシアターでミッキーと出会う。
ミッキーは実に洗練された仕草で彼女をエスコートするのである。
そして、何時までも洗練されない彼の生みの親のディズニーと、
その親から作られた洗練されてない映画『メリーポピンズ』に彼女は出会う。
なんて皮肉な。
洗練されていても、洗練されていなくても、そこに心が籠っていることが大事なことである。大事なことなのではあるが、その物語は彼女だけでなく、彼女の父親についても述べられる物語であるのだから、自分の姿形は道化のように描かれたとしても、父親については洗練された姿形で描写してもらいたかったのではないだろうか。そう思わなくもないのである。もっとも洗練から遠い人間に彼女がこの物語を渡してしまった時点でそれが適えられない事だったとしても。

最後に志村喬が出てきて「勝ったのは我々ではない。勝ったのはディズニー達だ」と言いそうなレビューになった。そうだな、菊千代的だな、ディズニーって。


【銭】
金曜UCT会員デーで1000円。

▼作品詳細などはこちらでいいかな
ウォルト・ディズニーの約束@ぴあ映画生活
▼この記事から次の記事に初期TBとコメントを付けさせて貰ってます。お世話様です。
ウォルト・ディズニーの約束@タケヤと愉快な仲間達
ウォルト・ディズニーの約束@ラムの大通り
ウォルト・ディズニーの約束@ペパーミントの魔術師
ウォルト・ディズニーの約束@yukarinの映画鑑賞ぷらす日記
ウォルト・ディズニーの約束@優雅的生活
ウォルト・ディズニーの約束@映画通信シネマッシモ☆映画ライター渡まち子の映画評

PS 約束してディズニーに『メリー・ポピンズ』を作ってもらった娘が映画を観て、
 「これは全然『メリー・ポピンズ』じゃない」と怒るみたいなエピソードは
 ないんですかね?


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この記事へのコメント

1. Posted by ふじき78   2014年04月12日 10:49
テスト、テスト。
2. Posted by タケヤ   2014年04月12日 16:18
僕はどちらかと言うと
しつこい方の営業マンなので
ウォルト寄りですね。

ばばあ、もう諦め〜や〜。
いや言ってません。
心の叫びです。
3. Posted by ふじき78   2014年04月12日 23:28
こんちは、タケヤさん。
契約そのものはどうでもいいんですけど、建てるビルが要求から逸脱して手抜き工事だったら怒っていいでしょ。ペンギンをアニメでって、有耶無耶になった部分だけど、有耶無耶になったのをいい事に好き勝手アニメで作っちゃうディズニーってけっこうブラックだと思うんですよ。
4. Posted by えい   2014年04月13日 22:17
>原作精神の再構築以上にディズニー作品への塗りつぶしを優先してる気がする。
一目見て、ディズニーと分かるパッケージング。

いやあ、そうなんですよ。
ぼくもそれを考えていました。
ディズニーの特にアニメは、
どれを観てもディズニー色に染まっている気がします。
5. Posted by ふじき78   2014年04月13日 23:55
こんちは、えいさん。
ディズニーを殊更、悪人にするのも気が引けるんですけど、案外、善人というだけでもない気がするんですよ(善人にしておいた方がいろいろ都合がいいって事情がありそうで)。
6. Posted by ナドレック   2014年04月14日 00:21
こんにちは。
私はターザン小説が好きなので、ターザンの原作者の遺族にも「ハッピーエンドなんてもっての外」と云って欲しかったです。

本作を観て、ウォルトが子供に見せたいのがこういう映画だったのかなと思いました。
7. Posted by ふじき78   2014年04月14日 01:16
こんちは、ナドレックさん。
父ちゃんが自分の父親の投影だったから、彼自身が子供の立場で親から与えられたかった物語なのかもしれません。
8. Posted by yukarin   2014年04月14日 13:00
運転手が連続殺人鬼でディズニーランドが悲劇の舞台に...ってのも観てみたかったかも...ごめんなさい(笑)
9. Posted by sakurai   2014年04月14日 14:20
私が一番納得入ってないのが、「リトル・マーメイド」だな。
「ラプンツェル」も絶対にグリム兄弟から突き上げられると思います。天国で、ウォルトさんは、裁判にかけられてたりして。
などと言いつつ、素直に感動してた自分がかわいいですわ。
10. Posted by ふじき78   2014年04月14日 23:29
こんちは、yukarinさん。
連続殺人鬼に立ち向かうミッキーとかもちょっと見てみたいです(笑)
11. Posted by ふじき78   2014年04月14日 23:35
こんちは、sakuraiさん。
原作が元々童話みたいなのは罪が軽いです(話そのものが何パターンもあったりするから)。メリーポピンズとかターザンは創作者がいるんだから自由自在はあかんやろ。
12. Posted by とらねこ   2014年04月15日 15:04
「ペンギンのアニメが酷すぎて…」には泣きながら鼻水噴きだしましたわ
ミッキーに「洗練を学びなさい」と言って後ろを向けたけれど、
その後寂しい時に取り出してきて、一緒に抱いて寝るシーンもあるし
ミッキーの扱いで彼女の気持ちが分かる作品になってたと思います。
ディズニーアニメは確かにディズニー一色になってしまうのだけれど、
この作品はそれに最後まで抗ったP.L.トラヴァース女史の気持ちに
ちゃんと沿って描かれていたから良かったのかも。
13. Posted by ボー   2014年04月15日 20:39
たしかに。
この映画でネタにされて、また儲けられてるし…。
ミュージカルはイヤ、アニメはイヤ、とトラ夫人は言っているのに、その案を夫人を目の前にしながら、ずーっと引っ込めないウォルトであった。
強情かつ商売人なんですねえ。
14. Posted by ふじき78   2014年04月15日 23:15
こんちは、とらねこさん。
喋ったり動いたりしないヌイのミッキーはまだ悩みとか静かに聞いてくれるからいいかもしれないけど。けっこうトラヴァース夫人目線の話なのにブログでおばさんを攻略した流石ディズニーみたいに書かれてるのが多くて心が痛みます。
15. Posted by ふじき78   2014年04月15日 23:18
こんちは、ボーさん。
そうかディズニーの声を関西弁で充てればよかったのか(がっぽがっぽ儲かりまっせ・・・関西から怒られるって)
16. Posted by SGA屋伍一   2014年04月25日 21:46
ディズニー亡きあともディズニーの征服欲ってものすごいものがありますよね。マーベルもスターウォーズも吸収されちゃったし… かの帝国に立ち向かえるものは誰かいないのか!? USJとか!? サンリオビューロランド!?
17. Posted by ふじき78   2014年04月25日 23:35
こんちは、伍一どん。
ないですねえ。キャラ一体あたりの売込み度から言ったらキティーちゃんは大層な状態だと思うんですけど。
18. Posted by クマネズミ   2014年04月29日 20:49
こんばんは。
「「これは全然『メリー・ポピンズ』じゃない」と怒るみたいなエピソード」とありますが、日本でだったら、映画『メリー・ポピンズ』を見て、「これは全然『メアリー・ポピンズ』じゃない」と怒る人がいるかもしれません(なぜか、映画の邦題と原作の邦題が微妙に異なっているのです)!
それにしても、本作の原題(Saving Mr.Banks)を欧米人は直ちに理解できるのでしょうか?
19. Posted by ふじき78   2014年04月30日 00:14
こんちは、クマネズミさん。
「メリー」も「メアリー」も元を正せば『Mary Poppins』からなので、もう一つ新しいメディア展開がされたらば今度は『マリー・ポヒンズ』になるかもしれません。「ケビン・コスナー」がたまに「ケビン・コストナー」と書かれるのと同様でしょう。

結局、トラヴァース夫人は作品の出来が気に入らず、後々まで文句を言っていたそうです。
20. Posted by maki   2014年08月08日 08:38
メリー・ポピンズ、この作品を見る直前に見終えたのですが、原作とは全然違った性格だったみたいですね
一体どんなメリーさんなんだろう…
そして電話してくるのだろうか…
「こんにちは!私、メリーよ」
いやいやいや。
21. Posted by ふじき78   2014年08月08日 08:47
こんちは、makiさん。
それ、全身白い服のメリーさんでしたっけ?

メリー・ポピンズの代わりに、日本の昔の二人組アイドル、ポピンズがやってきたら、そこそこ役立たずだと思う。

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